クラブサンドイッチ 1998年 春号 No.85

クラブサンドイッチ 1998年 春号 No.85

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商品番号:FAB11420036

 

イギリスのポール・マッカートニー公式ファンクラブ紙(英語版)。

約413×279mm(16.25×11インチ)の新聞判

 

■ 最大の話題は「The Fireman」の新作

この号で非常に重要なのが、The Firemanの新作『Rushes』です。

1993年の『Strawberries Oceans Ships Forest』以来となる、ポールとYouthによるThe Firemanの第2作。

No.85では、まだ発売前のこのプロジェクトについて、

「ポールのスタジオから新しいサウンドが聞こえてくる」

という形で、ジェフ・ベイカーが探りを入れる記事が掲載されています。

そして非常に面白いのが、この段階ではまだ『Rushes』というタイトルすら決まっていないこと。

記事では、

  • 「7am」
  • 「Appletree Cinnabar Amber」
  • 「Palo Verde」
  • 「Fluid」
  • 「Auraveda」
  • さらに「Plum Jam」
  • 「Through The Marshes」

といった曲名が紹介されます。

最終的な『Rushes』には「Watercolour Guitars」「Palo Verde」「Auraveda」「Fluid」「Appletree Cinnabar Amber」「7 a.m.」などが収録されましたが、「Plum Jam」「Through The Marshes」は結局アルバムには入りませんでした

これは資料としてかなり面白いです。

つまりNo.85は……

後から見ると『Rushes』の制作途中をリアルタイムで記録した号なんです。

しかも『Flaming Pie』とはまったく違う方向。

『Flaming Pie』が、

ビートルズ的なバンド・サウンド、メロディー、歌

だとすれば、

The Firemanは、

エレクトロニック/アンビエント/テクノ的な音世界

へ向かっている。

ポールがまた別の顔を見せ始めているわけです。


■ しかも、録音時期が「1998年2月」

ここは後世から見ると、かなり重要です。

『Rushes』の収録曲は1998年2月、Hog Hill Studioで録音されています。

つまりNo.85が「新しい音が聞こえてくる」と報告していたまさにその頃、ポールは自宅スタジオでYouthと新作を作っていた。

さらに「Palo Verde」にはリンダの声も使われています。

これは後になって、非常に胸に響く事実になります。


■ Lindaも参加していた『Rushes』

「Palo Verde」にはリンダのヴォーカルが入っています。

No.85が出た時点では、もちろんリンダの病状が一般に詳しく知られていたわけではありません。

しかし、1998年2月の録音にリンダも参加していた。

そして、

1998年4月17日、リンダ死去。

そのため、No.85は結果的に、リンダが生前に関わった最後期のClub Sandwichの一冊になってしまいます。

ここがNo.85を、単なる『Rushes』予告号以上に特別なものにしています。


■ 1998年春のポールは「次の三方向」を見ていた

No.85の面白さは、ポールが一つのことだけをやっていたわけではないことです。

この時期、ポールの活動は大きく、

① The Fireman

『Rushes』

② クラシック

『Working Classical』につながる作品群

③ 映像・アニメーション

『Tropic Island Hum』

という複数の方向へ広がっています。

前年の『Flaming Pie』でロック・ポップスに戻ったかと思えば、すぐに別の音楽領域へ進んでいく。


■ 『Working Classical』への伏線

No.85の時点では、後に1999年に発売される『Working Classical』についても動きが始まっています。

『Standing Stone』の制作過程で生まれた小品を、別の形でオーケストラ化していくプロジェクトです。

後の『Working Classical』には、

  • 「Somedays」
  • 「Calico Skies」
  • 「Tuesday」
  • 「A Leaf」
  • 「Maybe I'm Amazed」

など、ポールの既存曲や新しい小品をクラシック編成にした作品が収録されます。

つまりNo.85のポールは、

『Flaming Pie』の次にまたロック・アルバムを作る

という単純な動きではありません。

むしろ、

ロック → エレクトロニック → クラシック

と、さらに活動範囲を広げていこうとしていた時期です。


■ 『Tropic Island Hum』も継続

そしてもう一つ、No.85の頃には『Tropic Island Hum』のプロジェクトも進んでいました。

これはポールとアニメーション作家ジェフ・ダンバーによる作品。

もともとは1980年代に録音された「Tropic Island Hum」という曲が出発点で、1993~95年ごろから本格的な映像化が進められていました。

1997年には映画として公開されましたが、No.85の時期にはまだ、ポールの映像作品・アニメーション作品として継続的に扱われています。


■ 1997年の成功を振り返った「次の一手」

No.84までで、

  • 『Flaming Pie』
  • 『Standing Stone』
  • 『Many Years From Now』
  • 「Beautiful Night」
  • HMVサイン会

など、1997年の大きな活動が一段落しました。

No.85になると、誌面の空気が、

「去年はこうだった」

から、

「さて、ポールは次に何をする?」

へ変わってきます。

そして、その答えが、

The Fireman

だったわけです。


■ そして、この号を今読むと……

ここが一番重要かもしれません。

No.85は、1998年春に発行された最後の通常号です。

この時点では誰も、

「次の号が通常のClub Sandwichではなくなる」

とは思っていません。

しかし実際には、

1998年4月17日
リンダ・マッカートニー死去

という出来事が起こります。

そのため次のNo.86は、通常号ではなく、リンダへの追悼を中心とした44ページの特別号になります。

さらにそのNo.86が『Club Sandwich』最終号。

1998年10月、ファンクラブは正式に解散し、『Club Sandwich』も終了することになります。ポールとリンダが約21年前に一緒に始めたプロジェクトだったため、ポールはリンダなしで続けることは適切ではないと判断しました。


■ No.85の位置づけ

だから、No.85は単なる「1998年春号」ではなく、

『Club Sandwich』最後の通常号であり、リンダが亡くなる直前のポールとリンダの活動を記録した最後の通常のファンクラブ誌

という意味で、非常に重要です。

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